Ⅳ 形勢判断を見直そう(6)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(6)

 点数だけでなく、枚数も見ようという提案をしました。

 盤上か駒台かの違いも見ようと言いました。

 こうなったときに、非常に重要な概念が出てきます。そうです。

 歩切れ。

 形勢判断で非常に重要なのが、この歩切れです。

 級位者だと、なかなか実感が湧かないと思います。でも、将棋で最も重要なのは王様で、大駒なんだけれど、そして、金銀の重みも相当なものなのだけれども、しかし、そのようなところを突き詰めていくと、最後は歩なのです。

 歩は点数自体は1点ですから、価値が低い。しかし、歩は他の駒と違って枚数が重要です。一歩千金というように、歩が0枚であるのと、歩が1枚なのとでは雲泥の差が開く。あるのと、ないのとでは大違いというのは、哲学や数学の世界では本当に決定的な懸隔になります。将棋でも、そのくらいの違いが理解できないと、独自の大局観は築くことができません。

 ただし、歩はと金になるという意味ではなく、歩そのものの価値をきちんと見極められるようになりたいものです。歩切れだと、合駒できないし、叩きの歩などの手筋も絡められない。

 結局、歩の使い方が上手な人が達人なのです。

 問題は、達人同士のときにどうするか、あるいは、互いの実力が伯仲しているときにどうするのかということですが、この場合は、0.5枚という概念を提唱したいですね。

 手番についても0.5手差というのがあります。1手違いというのはプロ的には大差で、0.5手差と実感できるような微差が存在します。

 それと同じことで、歩切れと歩持ちの中間があると思っています。それを0.5枚と名づける。どういうことかというと、現実には歩切れなんだけれども、入荷の見込みがある状態であれば、それを計算に入れて指すことができるわけで、それを0.5枚と表現したわけです。

 バンバン歩を叩いては捨て、叩いては捨てするのだけれども、ちゃんと確保する見通しがあるというのが、もっともギリギリの歩の使い方です。

 相手が歩切れなのに、お手伝いですぐに歩を渡してしまう人がいますが、これは逆に、まずい。相手には歩を0枚にする。0.5枚にしない。まして1枚献上するのは阿呆のしわざ。

 もっとも、歩をたくさん持ちすぎていても役に立たないということもあります。たとえば、歩1点、桂馬5点ですが、実際には歩10枚より桂馬1枚のほうが価値があることもあるわけです。現代将棋では、とりわけ桂馬の計算が難しい。渡辺先生の形勢判断のユニークで特筆すべきところは、桂馬の価値が変動する点ではないでしょうか。

 ともあれ、歩の大切さというのは、昇級、昇段するごとに実感できるものです。そうであればこそ、歩というものの存在をよく考えてみましょう。

 将棋は歩から、です。