Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(5)

Pピリ将

 

f:id:Shouldgo:20180205143357p:plainf:id:Shouldgo:20180205143357p:plainf:id:Shouldgo:20180205143357p:plain

 

「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(5)

 日常の時間と、将棋の時間と。

 両者を橋渡しするということを言ったものの、これは至難の業です。

 どうしてかというと、時間は均質だという科学の前提そのものが疑わしいから。

 たしかに、ストップウォッチなどで、時間は客観的に計測することができます。

 しかし、われわれの主観や体感として捉えられる時間を、ストップウォッチで計ることができるかと問われると、口ごもらざるを得ません。

 実際、将棋の時間と、それ以外の時間は、まったく別物です。少なくとも、主観的、体感的には、そう断言したい誘惑に駆られます。両者をしっかり意識することを心がけている私ですら、そう思うのですから、ほとんどすべての将棋ファンの実感ということができるのではないでしょうか?

 タイトル戦の中継をルールもわからずに見ている人と、ルールがわかって見ている人、そして当の対局者本人に流れている時間は、それぞれ別なのだと私は信じます。

 したがって、陸上競技のように、単純に時間を計測して終わりということにはならないのだろうという結論らしきところへ押し出されます。

 それでも、10分切れ負けなら、2人合わせて20分という時間ははっきりしています。この時間にあらゆる手段を尽くして、適応していくことはできます。

 たとえば、将棋以外の時間では、テレビの20分番組をプロデューサー視点で視聴するという方法があります。テレビ番組そのものに没入しないために、同じ番組を繰り返し見るのがコツ。ストップウォッチを手にして、部分々々の時間を計測したり、全体を序盤・中盤・終盤に分けて俯瞰するなどです。

 他方、10秒将棋対策なら、持ち時間付きで、歌をうたうという方法がある。たとえば「大きな古時計」は♩=60、すなわち1秒で1拍のテンポでうたうのにちょうどよい楽曲。だから「大きなのっぽの古時計」のところで、パシッと指せば、10秒将棋は楽勝です。

 将棋の時間と将棋の時間を結びつけることは、当然、行います。10分切れ負けの動画を視聴し、自らも体感する。10分切れ負けや10秒将棋の設定にして、ソフトと対局リハーサルをする。棋譜並べも、これらの持ち時間を意識したものにする。等々。

 誰も時間に、ここまで意識が行かない。だからこそ、こちらのB面で努力し、準備を万全にしておくのです。

 実際、私の勝利の半分は、時間戦術、時間管理で手に入れたものだと言っても過言でないでしょう。私はあまり才能に恵まれていない晩学組ですから、強い方に勝つにはそれなりに工夫や知恵が必要なのです。

 「時間で勝つ」と聞くと、なじる人があるかもしれませんが、私はそのような声はまったく気にしませんし、気になりません。如上の哲学に基づき、異なる目標を目指して指しているのですから、涼しい顔をして堂々としています。