Ⅳ 形勢判断を見直そう(16)

Pピリ将FINAL

 

f:id:Shouldgo:20180205143357p:plainf:id:Shouldgo:20180205143357p:plainf:id:Shouldgo:20180205143357p:plain

 

「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(16)

 VN(形勢判断)とPN(読み)は、指向性が異なっています。

 VNはシンプル化を目指すのに対し、PNは緻密化を目指しています。

 そうであるならば、VNを鍛えるためにさしあたり必要なのは、直観の鋭さと単純への着目ではないでしょうか?

 直観は感覚なので、早指しや高速棋譜並べで鍛えます。しかし、単純への着目は思想なので、哲学者のように頭で論理的に考えに考え抜きます。

 その結果、将棋で単純な要素というのは、原則として、次のような事柄であるという結論に達しました。

 

●駒の種類は8種類しか存在しない。

●駒の枚数は各20枚しか存在しない。

●盤上の駒と駒台の駒では価値が違う。

●普通の駒と成駒では価値が違う。

●流れは序盤・中盤・終盤しか存在しない。

●エリアは自陣・敵陣・その中間しか存在しない。

●駒の損得・駒の効率・手番は形勢を左右する。

●強い相手でも心理に問題があれば勝機がある。

●強い相手でも時間がなければ間違える。

●強い相手でも将棋は難しいから間違える。

●自分が間違えず、相手が間違えれば勝つ。

●相手玉を先に詰ましたら勝つ。

●自玉が詰まされなければ負けない。

●最終的には勝ちと負けと引き分けしか存在しない。

 

 まだまだありますが、このように分岐の少ない事柄を一つひとつ徹底的にチェックしていくと、大局観が鍛えられます。大局観とは、つまるところ、理論だと考えています。

 そして、理論と言うからには例外があるわけですが、そのような例外を極力減らすことができるかどうか。もしくは、例外を素早く発見できるかどうかが重要です。

 いちばん手っ取り早い例外は、駒の損得。あえて損をして得する戦術。「終盤は駒の損得より速度」という格言があって、誰もがこれを当たり前だと信じて信奉しているようですが、私は懐疑的。とはいうものの、駒の損得を度外視する攻めというものは、損して得する代表的な戦術と言えるということは肯います。

 ちなみに私は「駒得は裏切らない」という格言のほうを信奉しており、駒の損得・駒の効率・手番の3要素のすべてを取りに行くという思想に切り替えてから強くなりました。

 かつては、駒損をしてでも駒の効率と手番を重視するスピード将棋、攻め将棋でしたが、今は駒得して駒の効率も高めて手番まで握ってやろうという欲張り将棋、受けつぶし将棋になっています。相手がプロでないかぎり、根こそぎ流、全駒流でいこうと決めたのです。

 この方法自体は、私の将棋部の先輩Y氏直伝のものなのですが、Y氏の方法の問題点は、スマートでないという点。言い換えれば、泥沼流すぎて、エレガントさに欠けるという点でした。そこを私は大局観をキーワードにして、アレンジ、再生を果たしました。

 最も重要な改善点を2つあげると、1つは軸をつくること。3要素のどれかを主にして、残りは従にする。従にするとはいっても、捨てるわけではなく、残す。もう1つは、あえて隙をつくること。本当は3要素のすべてを取りに行きたいのだけれども、いや、そうであるからこそ、あえて隙をつくって誘い込むということです。

 思うに、将棋はペテンとの相性がすこぶるよい。落とし穴を掘ったり、罠を仕掛けたり。そういうことに喜びを感じなければ、絶対に強くなれないと断言していい。

 言い換えれば、性格が悪くなければならないということなのですが、ここで大事なのが、性格の悪さを主、性格の良さを従にするということで、将棋が終わってしまえば、この主と従を反転させることを忘れてはなりません。