Ⅳ 形勢判断を見直そう(1)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(1)

 将棋で強くなりたければ、必ずやらなければならないことが、いくつかあります。

 1つめは、心を動かすということ。はじめに感動ありき。

 2つめは、二者択一をしないということ。1つの方法だけでは絶対に強くはなれないので、勉強法の好き嫌いをなくし、あらゆる方法を試す。

 3つめは、2つめとも関係するが、実戦ばかりで強くなろうとするなということ。弱い人が実戦を指しても、せいぜい現状維持にしかならない。感想戦や研究、詰将棋など、日ごろの地道な鍛錬がなければ、超弩級に強くなることなどありえない。

 最後が、形勢判断の見直し。大局観を磨けば、将棋は簡単に上達します。他の方法は苦しく辛く大変ですが、将棋で唯一、楽して強くなれる方法があるとすれば、それはすぐれた大局観を会得することだと思います。したがって、すべての教えの中で、最も強調したいのがこの大局観、です。

 ちなみに、市販の大局観では必ず限界が来ます。自前の大局観を一から構築しなおすことを強くおすすめします。

 自前の大局観とは、何か?

 その前に、市販の大局観というのは、たとえば、谷川浩司先生の形勢判断法が有名です。駒に点数をつけるので、わかりやすい。実際、私自身も子どものころに愛読していた『将棋に勝つ考え方』により、長らくこれで戦ってきたのですが、しかし、実際はこの形勢判断を最近になって修正することにより、爆発的に強くなることができたので、それを今から勧めたいと思います。

 基本を復習しておくと、形勢判断の3要素は、〈駒の損得・駒の効率・手番〉の3つ。まず最初の岐路は、この3つのうち、どれを重視するかという問題。もちろん、このブログの口癖のとおり「三者択一はするな!」は正しく、バランスが大事なわけですし、序盤と終盤では考え方もガラッと変わってきます。

 ということは、カレー粉の調合や珈琲のブレンドと同じで、各家庭によって味が違うように、形勢判断も十人十色ということになってきます。このことに気づけるかどうか。

 さらにいえば、駒の価値についても、同じ谷川先生でも駒に与える点数が変化しています。調べてみると、私が子どもの頃に読んだ本に書いてある数字と、将棋講座で教えている数字が違っていて、びっくり。

 しかも、渡辺明先生のそれは、谷川先生の新旧それぞれともまた異なります。うーん、どれが正解なのか? 結局、プロの見解を参照したとしても、何が正解か、わかりません。

 もちろん、プロ棋士の形勢判断を参照することはよいことです。AIのそれにしても同様。しかし、何より大事なことは、自分で考え、自分で創造し、自分で構築するということ。「歩が1点だとしたら、桂馬は何点? その根拠は?」というような手順で、形勢判断の見直しをするのです。

 ここで「考える」というのは、あらゆる意味を含みます。まず、自らの体験を踏まえる必要があります。実戦を指しまくって、文字通り、体得するのでなければ意味はありません。

 実戦を指しまくることに意味があるのは、1)初級のころに将棋に慣れるために指すときと、2)初段すぎてから脳内将棋盤をつくるためや早指しに強くなるために指すとき、3)実戦不足を解消し、勝負勘を取り戻すとき、そして、4)高段になり大局観を養うために指すときです。大局観の養成だけは、机上の空論だけではだめで、必ず実戦で実地で試行錯誤しながら、自ら経験を積む必要があります。

 なお、難し過ぎる、煩わしすぎる形勢判断法は、実戦では使えません。実際、私の場合、1秒で形勢を言い当てることができます。私の編み出した簡易スピード形勢判断法は、精確なものではありませんが、プロでも間違えそうな局面を大雑把ではあるものの、さっさと見極めてしまえるというメリットを持っています。

 この方法は門外不出なので、ここで公開するわけにはいきませんが、以下、編み出したプロセスを公開し、皆さんにも自前の形勢判断法を編み出していただきたいと願っています。