Ⅳ 形勢判断を見直そう(2)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(2)

 「駒得は裏切らない。」

 森下卓九段の名言は、本当に名言だと思います。プロでも通用するのですから、私たちアマチュアなら、なおさら有効なのではないでしょうか。

 まず、基本は、駒得すること、そして駒損しないことと言い切ってよいでしょう。ソフト対局で、駒損したら投了するという練習を積むと、すぐに級位者も初段になれるはずです。もちろん、それだけでなれるわけではないのですが、駒損しないためのイロハを習得することは絶対感覚的に必須と断言できます。

 駒損しないことを心がけておくと、ポカがなくなっていきます。また、極端に悪くなるということも減るので、将棋が楽しくなっていきます。序盤で悪くして、そのまま敗北すると、どんよりした気持ちになりますが、棋力が上がっていくと、そういう負けが減ってくる。しかし、だからといって、スリルがなくなるわけではないので、将棋というゲームは、本当によく出来ているなと、ため息が出てきます。

 二者択一は選ばない。駒得の重要性をこれだけ強調しておいた上で、反対のことも言います。「あえてする駒損は、大切だ。」と。

 具体的にいうと、大駒を切るタイミングの見極めなどのことを指しています。弱い人ほど大駒の切り方が下手くそです。強い人が大駒を切ったら、それは「勝ちに来ているな」となります。弱い人が大駒を切ってきたら、「この人、ルールわかっているのかな?」と心配になります。嫌みで言っているのではなく、本当にそう思います。

 もちろん、これは大駒には限りません。すべての駒に当てはまります。歩一枚でも切るか切らないか。そんなに簡単ではない。

 ここまでをまとめると、駒は等価交換するのが基本ですが、異なる価値の駒と交換する応用問題もあり、両方にある程度の尺度を持っていることが、独自の形勢判断を築く上での指標になるということです。

 より詳しい助言を授けるならば、上記の基本と応用の割合をどのくらいに決めておくかが、独自の形勢判断を手に入れるための分かれ道の1つになるよ、ということでしょうか。基本8:応用2なのか、基本7:応用3なのか、はたまた基本6:応用4なのか。

 私はこの配合を、対局者に応じて使い分けながら、匙加減を調節してきました。格上相手の場合は、基本の割合を下げていき、応用力で勝負する。反対に、格下相手の場合は、基本の割合を高め、万が一にも負けない、辛口の将棋を指すという具合です。

 そして最近は、中盤で大きく形勢に差がつかないようにしておいて、終盤で一気に雌雄を決するスタイルが板についてきました。終盤の序盤・中盤・終盤があるとしたら、終盤の中盤で技を掛けに行く。大胆に駒を捨てて局面を動かし、そのまま押し切るわけです。とはいっても、駒の捨て方にルールがあって、ある駒は捨てるのだけれども、ある駒は温存するというところまで、明確にルール化してあるのが、他の形勢判断法と違うところです。

 ここからすべてを逆算して組み立てます。終盤の終盤は、詰将棋の強い人、本当に将棋の強い人の独擅場ですから、そこで勝負をするようなら競り負ける。また、終盤の序盤までは、自分の勝ちパターンに持っていくために理想の持ち駒を集めに行きます。

 したがって、駒得重視だけれども、そのバランスを壊す瞬間を自分の中で決めておいて、その壊し方も理路整然と構築してあるということになります。

 抽象的で恐縮ですが、戦法や戦術における勝ちパターンとは違います。また、手筋ということでもありません。これは大局観であり、形勢判断法の問題なのです。将棋の全体の流れを支配しコントロールするためには、どうしたらよいのか。徹底的に考え抜くに値するテーマだと私は夢中になっているところです。