Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(3)

Pピリ将

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(3)

 「早指しは手が荒れる」というステレオタイプが、まことしやかに流布しています。

 私の意見は、半分が賛成で、半分が反対、というものです。

 たしかに、まだフォームの完成していない初心者や初級者の場合、あまりに短すぎる持ち時間は有害という気がします。また、有段者であっても、早指しが有効かどうかは、人によります。

 ただし、すべての人のすべての手が荒れるかと問われれば、答えは否。早指しには、2つのメリットがあるからです。

 1つは、アンチエイジング効果。早指しをすることで、若返りを図ることができます。

 若い人は、早指しが強い傾向にある。ならば、早指しに強くなることによって若返りを図るという発想に基づいています。鈍った反射神経を取り戻そう、と。

 若い人に早指しで勝ったときの喜びは、蜜の味。

 もう1つは、将棋が強くなる効果です。

 将棋が強い人は、早指しも強い。ならば、早指しに強くなることによって将棋自体も強くなってしまおうという発想に根ざしています。要するに、遅い頭の回転を速くする。

 ある程度、フォームを完成しておいて、「少々の早指しでは手が荒れない」という状況を用意した上で、早指しのトレーニングをすることをおすすめします。

 どうすれば、それが可能になるのかについては、いずれお話させていただきます。

 ともあれ、将棋ウォーズでいうなら、まずは10分切れ負けから始め、次に10秒、最後に3分切れ負けという順番になるでしょうか。ただし、10分と10秒、10秒と3分は併用する。ここが大事なところ。

 二者択一は、選ばない。いうなれば、軸は作っても、偏りはつくらない方針。

 仮に無料の3局で楽しんでいる人ならば、「10分2局に、10秒1局」のように、マイルールを決める。これが、第一。

 有料で楽しんでいる人の場合は、指し過ぎにくれぐれも注意しましょう。これは大事なことですが、「たくさん指しても、意味はありません。」

 もう一度、ゆっくり、繰り返す。「たくさん指しても、無意味です。」

 ある強豪がたくさん指している動画を見ましたが、鼻つまみ。

 そこそこの内容を保っているのはさすがとも言えますが、しかし、見る人が見れば、悲惨以外の何ものでもない。

 ああいう指し方は、暇な人は一回ぐらい経験してもよいのかもしれませんが、まともな社会人や学生は真似すべきではありません。将棋とその他の二者択一になってしまうから。

 だから、早指しで決めておくべきルールのその2は、「連敗したら、即やめる」。

 たぶん、推測するに、これができない人が、仮に将棋ファンが1万人だとしたら、9999人。

 残りの1人が、まあ、私なのですけれども、これは相当、賢くないと、できないこと。その賢さを意志の力で、手に入れてください。

 私の場合、将棋ウォーズなら、無料で最大3局しか指しません。

 

【3勝パターン】

 10分◯◯10秒◯

【2勝パターン】 

 10分◯◯10秒⚫

 10分◯⚫10秒◯

 10分⚫◯10秒◯

【1勝パターン】

 10分◯⚫10秒⚫ 

 10分⚫◯10秒⚫

【0勝パターン】

 10分⚫⚫

 

 連敗したら、終わり。

 実際は、1勝したら終わりのときもあるぐらい。

 「対局をたくさん指すのは、阿呆の所業」と自らによく言い聞かせていて、実戦の数を最小限に抑えて強くなることを自らに課しているので、ほとんど指さない。

 これは実は、将棋の大会で強くなるために有効な方法だと考えています。

 そもそも予選では2敗失格でしょうし、トーナメントなら1敗で終わりなわけですよね。普段からそれを取り入れる。

 ネット将棋と、リアル将棋大会。これも、二者択一ではありません。

 強くなりたい人は、どちらかというと、後者のほうが重要という感覚を持つ必要があります。ネット将棋は練習で、将棋大会のほうが本番だという意識の優先です。

 かつての私は、将棋がたくさん指せるという、それだけで、すっかり有頂天になっていました。

 ところが、そのために、負け癖がついてしまいました。もちろん、指し手が荒れるということもありましたが、負け癖がついたことが最大の負債だったと、今、振り返ってしみじみ感じます。

 負け癖がつくと、1つの負けに対する悔しさが、ただの感情だけのものになってしまい、それを糧にしたり肥やしにしたりということができなくなる。最後は、悔しいという感情すらなくなっていく。これは引退間近で、危険信号。

 今は対局数を抑えているため、そもそも、そんなに負けることがありません。

 自分の弱さはもう十分に味わい骨身にしみて知ったので、もうこれ以上、思い知らされる必要はないのです。

 1、2局、負ければ、それだけで10敗分ぐらい悔しいと思えるし、反省の材料は十分すぎるほど。そういう心境です。

 だから、今の私は、勝っても、負けても、感想戦(研究)重視。

 定跡を調べたり、棋譜を並べたり、ソフトにかけたりして、問題を発見し、解決する。詰将棋を解くなど、基礎トレーニングに明け暮れる。

 実戦も大事ですが、強くなるために、その他のトレーニングを重視しています。

 ただ、その他のトレーニングでは得られないことは2つあって、1つは試合勘というか人間の心理をつかむこと、もう1つは持ち時間の管理です。

 前者は別に語るとして、後者がここでのド真ん中の主題なので踏み込んでおくと、10分と10秒、どちらのほうが勝率が高いかを冷静に分析します。

 弱いほうを鍛えるために、もし10秒のほうが弱いのなら、今度は10秒を軸にする。すなわち、10秒を2局指して、10分を3局目に回すということです。

 こういうことを繰り返しているうち、持ち時間による勝率の差をならし、かぎりなく均質になるよう近づけていきます。

 ここまで来ると、我ながら、職人的な調整ですね、と思います。(笑い)

 負けることを自らに許さない。負ける練習はしない。

 純粋に対局総数が少ない初心者や初級者はたくさん負けて強くなるしかないので、ここからは除きますが、上記は案外、大事なことだと思っています。