Ⅱ 二者択一は選ぶなA(8)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅱ 二者択一は選ぶなA(8)

 先生選びのような少数の例外はあるものの、「二者択一を選ぶな」は、上達法などの分野、すなわち盤外においては、かなりの効果を発揮します。

 究極的には、好き嫌いをなくし、貪欲に何でも吸収しようとする姿勢につながると信じています。

 AとBとCが棚に並んでいるとすれば、全部まとめて買ってくる。

 もちろん、経済力が必要ですから、お金がなければ、こんな芸当はできっこない。けれども、お金が要らないところでも、私たちはいつの間にかケチになってしまってはいまいか。

 AとBとCという上達法が転がっていれば、全部まとめて拾ってくればよい。そして、それぞれ試してみて、最終的に捨てればよいわけであって、最初から即断して「要らない」というレッテルを貼って見向きもしないのは、もったいない。

 いやなこと、嫌いなもの、苦手なこと、面倒くさいもの、つまらないこと、面白くないもの、不快なこと、汚いもの、きついこと、つらいもの・・・・・・

 そういうネガティヴな物事は、本当にそのようなものかというと、そうではなくて、感情的にそう即断しているに過ぎず、案外、間違った判断を下していることも少なくありません。

 そもそも脳は、生存本能からか、かなり臆病に出来上がっています。筋トレをする場合も、脳はすぐに悲鳴をあげます。脳の言うことを聞いていたら、いつまで経っても筋肉はつきません。だから、「脳がもう止めようよ~」と言ってきても、「止めません!」と、鋼の意志を発揮する必要があります。

 その逆もあります。自らの欲望に過剰にブレーキをかけてしまうパターン。かわいこちゃんが歩いてきたのに声をかけない。おいしい食べ物が目の前にあるのに買わない。トイレに行きたいのに我慢してしまう。むかつく上司にむかつくことを言われたけれど黙っている。こういう我慢は、行き過ぎると、心の病気になってしまいますよ。

 いずれにせよ、アクセルとブレーキのバランスが問題なのです。縦と横に線を引き、クロスさせ、マトリクスを作ってみましょう。横のx軸はアクセル、縦のy軸はブレーキとすると、右上はアクセルとブレーキを両方踏む【葛藤エリア】、右下はアクセルは踏んでブレーキは踏まない【暴走エリア】、左上はアクセルを踏まないでブレーキを踏む【慎重エリア】、左下がアクセルを踏まないでブレーキも踏まない【無為エリア】の4象限が出来上がります。

 結論からいうと、これらはすべて必要な領域です。

 【葛藤エリア】がない人間には成長がありません。【暴走エリア】がない人間には急成長がありません。【慎重エリア】がない人間は事故を起こします。【無為エリア】がない人間は心を病みます。

 もちろん、これに目盛りが加わり、個性が出来上がります。コーチの仕事は、本人がアクセルを踏もうとするときにブレーキを踏んであげ、ブレーキを踏もうとするときにアクセルを踏んであげること。あるいは、目盛りが多いときは少なく、目盛りが少ないときは多くするというような増減や添削も、仕事のうち。

 将棋にはコーチはいません。したがって、自分自身で、こういうことを考えていく必要があります。

 偏食で好きなものしか食べないような人間は強くなれません。かつて亡くなった米長邦雄永世棋聖は、内弟子にあえて苦手な食べ物を供したと伝えられていますが、よくわかる気がします。