Ⅰ はじめに感動ありきA(2)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

 

Ⅰ はじめに感動ありきA(2)

 ここまでは「感動」にフォーカスしてきましたが、「はじめに~ありき」のほうにも目を向けてみましょう。

 「はじめに」ということは、「最初」ということです。「途中に」や「おわりに」でも、もちろんダメではないでしょうが、しかし意図するところからは逸れてしまいます。

 他方、「ありき」の「き」は、過去の助動詞。高校の古文文法の復習ですね。

 大切なところなので、高校のとき古文が苦手だったという方もしばし、お付き合いいただきます。過去の助動詞「けり」が間接的に伝聞したことを表すのに対し、「き」は自らが直接経験した過去を示します。

 コーチングの場合、ここでいう「過去形」というところも、後述するように1つのポイントではあるのですが、それ以上に「自らが直接経験する」というところが決定的に重要です。

 他者の経験談を聞かされても、馬の耳に念仏で、ほとんど役に立ちません。自らの武勇伝を語って聞かせる指導者がいますが、あれは具体例、物語化という意味では役に立つのですけれども、やはり自らの体験ではないので必要十分な方法とまでは言えません。武勇伝ばかりを語るタイプの指導者(に)は、注意しましょう。それよりも、学び手本人の体験として「感動」を味わわせることがとりわけ重要です。

 「過去の感動体験を起点に据えて、絶えずそれを参照しながら、新しいことにチャレンジしていく」という図式がここでようやく見えてきました。

 つらいとき、うまくいかないとき、よくわからなくなったときに、立ち返る原点、ふるさとが「感動」であると、再び心に火をともしてくれます。

 後述するといった「過去形」ということにも少しだけ言及しておきましょう。日本語学を参照すると、日本語のテンス(時制)には過去形とその他の形の2種しかないということがわかります。これは極論ですが、現在形や未来形というものを認知する力が劣るということにもなっている可能性があります。もし、そうだとしたら、未来のために頑張る、将来のために努力するということは、あまり得策でないと言えそうです。実際、私自身の経験でも、未来を生き生きとリアルに想像できる人は稀で、多くの人々は本気で未来の理想図を実現しようとせず、すぐに弱音を吐き、言い訳を連ね、先延ばしにし、落ちこぼれてしまいます。

 ところが、過去のために頑張るという図式は、殊に日本人の場合、成立すると見ています。老人の多くは、過去ばかりを見つめています。老人の書く小説を読むと、いかに過去に籠絡されているかがわかります。過去を参照点にするということの意味は、こういうところにもあります。

 喩えると、過去の自らの感動は、風船を結わえつける地点。元気よく浮かぼうが、地面に墜落しようが、どこかに結びつけてあれば、離れて紛失してしまうことはありません。そのような強力な過去を築き上げることが初学者には必須です。

 できれば、感動と成功体験を合わせたものを原点とすることです。そこからどんどん花が咲く仕組みが分かってくると、もう大丈夫、独り立ちです。