Ⅰ はじめに感動ありきA(3)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

 

Ⅰ はじめに感動ありきA(3)

 さらに、「はじめに」ということを別の観点から掘り下げます。

 別の観点とは要するに、「次に」ということと関わってきます。私たちは自動車の運転と同様に、「ファースト」「セカンド」「サード」とギアを上げていかなければなりません。いわば「トップギア」へ導くというのが、指導者の役割です。

 前回、日本語の特徴を説明しましたが、母語である日本語を強化することは駆動源たるエンジンの強化につながるため、大切です。そこで、もう1つ、「品詞の中で最も難易度の高いものは何か」という問いを発してみたいと思います。「品詞」とは、「動詞」とか「名詞」とか「助動詞」とかのことです。

 正解は「接続詞」でした。接続詞が難しい理由は、他の品詞は文の中で役割が決まるのに対して、「接続詞」だけは文章全体の中で役割が決まるため、視野が大きくないと使いこなせないというところにあります。将棋でいえば、大局観が求められるわけです。

 この問題に対して、私が予備校で現代文を教えていたときは、「まず」「次に」「さらに」「そして」という接続詞の流れを教えるようにしていました。

 「はじめに感動ありき。」それでは、次は? 当然の疑問だと思います。

 「次」は、「繰り返し」です。徹底的な反復練習です。感動したら、その感動が冷めないうちに、繰り返し、繰り返し、反復練習あるのみです。

 私がヴァイオリンを教えるとき、まずは偉大なるヴァイオリニストの演奏を聴かせます。できれば実演が好ましいですが、無理ならレコードです。聴かせるときの環境や、聴き手のコンディションにも十分配慮し、感動を少しでも最大化できるように気配りします。

 ただし、ここからが重要なのですが、運よく感動してくれたら、「その次」を完璧に用意しておく必要があります。その曲の譜面を用意し、難しいパートと易しいパートに分け、易しいパートを弾きこなすために必要な基礎練習のメニューも揃えておきます。要するに、成功体験の準備。

 あまり易しすぎる曲を聴かせると、伸びしろがなくなるので、難しい曲のほうがよいでしょう。しかし、難し過ぎて手も足も出ないというのでは、挫折してしまうので、易しい部分も用意しておくのです。

 それなりに努力して、つまり反復練習した上で、それなりに感動の一部にかかわる成功体験を積ませる。これが重要なのです。

 将棋でいうと、ある対局のある一手に感動する。そうしたら、その棋譜の一部分を自分のものにするために、血のにじむ努力をする。反復して同じ棋譜を部分的にでもよいので繰り返し、繰り返し並べる。その末に、今まで勝てなかったライバルに勝つ。

 「感動」の次の「繰り返し」、すなわち「成功体験」というものは、おおよそ、このようなイメージとなります。