Ⅳ 形勢判断を見直そう(12)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(12)

 形勢判断とは何か?

 その答えを知るには、羽生善治先生にうかがうのが、最もてっとりばやい。

 著書もあり、インターネット上にインタビュー記事もあるので、必ず参照しておいたほうがよいと言っておきましょう。私のブログを読むよりも、数倍の価値があります。

 私が他人の話を聞くときに注意深くなるときがあって、それは比喩を用いるときです。あるカウンセラーから聞いた話ですが、比喩を使える人のメンタルはさほど心配ないんだそうです。比喩はそれだけ高度な能力なんですね。

 歴代の名人は皆様、比喩がお上手ですが、羽生先生も例外ではありません。ライフネット生命のインタビュー記事によると、「大局観」を「ジグソーパズル」と「目的地探し」に喩えていらっしゃることがわかります。これが、とってもわかりやすい。

 詳しくは検索してみてほしいのですけれども、全体をどう捉えるのか、大局観と読みの役割分担、切り替えのタイミングなどが、これらの比喩によって腑に落ちるのです。

 大局観では、難しいところや込み入っているところに深入りする必要はない。しかし、その一方で目的地に辿り着くためには、適当でもいけなくて、最後は細かい読みが必要だから、両立することが大事といったことが、これらの比喩によって即座に伝わってきます。

 大局観を英語にすると、パースペクティブとか、ワイド・パースペクティブとなるようですが、私はその本質は比喩だと思っています。

 比喩というのは、ある体系と別の体系を大きく比較することができなければ、使いこなすことのできないレトリックです。これは何かに似ているということを、部分的に比べるのではなく、部分部分の対応だけでなく、全体体系の対応まで確認することが比喩表現には求められるのです。

 この将棋は何かに似ている。こういうセンサーが働けば、大局観が使えます。そして、その何かを発見できれば、大局観も頼りになります。経験が多いほうが大局観が発達すると言われているのも、そういうことが理由だと私は見ています。

 年齢が高くなっても将棋を楽しめているのは、若い人と違って、古い将棋を参照できているからでしょう。昔の将棋に似ているなとか、違うなという感覚を大局観という形で、利用しているわけです。

 そのように考えていくと、一つの戦法に精通しているだけでなく、さまざまな状況に広く対応できる練習なり訓練を積むことが大局観を養う上では欠かせないという結論になりそうです。

 私はある時期、あらゆる戦法を選り好みせずに棋譜並べするということをしていました。それはあまり意味がなかったと反省していたのですが、さらに時間が経った今、無駄ではなかったと気づくことになりました。過去の将棋と最新の将棋を比べる視点を得ることができたからです。そして、両者を融合して、次々と新しい戦法を編み出すことにも成功したからです。

 アマチュアにはプロとはまた違った大局観が必要で、それを模索すると、即効性はないかもしれませんが、やがて大樹となって恩返ししてくれることでしょう。私にとって、「大局観」とは「温故知新」の類義語です。