Ⅳ 形勢判断を見直そう(13)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(13)

 以前に「軸」というお話をしました。また、将棋以外のお話もしました。

 そこで、今回は大局観という話題を両者と結びつけてみようと思います。

 将棋の勉強法にも大局観が要るというお話です。いや、将棋だけに限らない。今はまさに受験シーズン真っ只中でもあるわけですけれども、どんな勉強であっても、勉強法には大局観というものが必要です。

 実は昔取った杵柄で、最近、受験生の指導をボランティアでしています。元・予備校講師の実力は衰えません。もちろん、細かいデータなどは現役の先生方には及びませんが、軸の部分ではむしろ現役の先生よりも上だと思っています。

 たとえば、「英単語や古文単語が覚えられない」という悩みは、普遍的な悩みなので、私のようなロートル(退役軍人)であっても十分に戦えます。皆さんなら、どう答えますか?

 私の答えは、こうです。「世の中には、覚えるのが得意な人とそうでない人がいる。そこにはあまり言いたくはないのだけれど、やっぱり才能というものもあるので、他人の才能を羨むことはやめよう。もちろん、努力の問題や工夫の問題であるものを才能の問題に転嫁して言い訳にするのは、ダサいし、本質を見逃すことにもなるので、よくない。けれども、『覚えられない』という自覚が君にあるのであれば、『天才的に覚えられる』という幻想は一刻も早く捨てて、天才の二倍の努力と四倍の工夫で乗り切ることが大事なのではないかしら?」

 ここまで言ってから、相手の反応を見て、続けます。「ところで、天才が速く覚えられたとしても、それをすぐに忘れてしまったり、不確かなものであったりしたら、どうだろう? そう。意味がないよね。私はもうロートルだけれども、英単語も古文単語も同業者や辞書、単語帳以上に精確に覚えている。(いくつか実演してみせた上で)何の準備もなく、こういう知識が淀みなく泉のように出てくるのは、高校時代のインプットの質が高かったから。短期記憶ではなく、長期記憶にしているから、これでご飯が食べられるようになった。長期記憶にすれば、ボケないかぎり、一生この記憶を保持することができる。君は、多少時間がかかったり手こずったりしたとしても、こういう質の高い記憶を目指すべきだ。さあ、そのためには、どうすればいいと思う?」

 少しだけ間を置いて、結論を授けました。「情報を整理した上で語感を駆使して覚える。やみくもに覚えようとすると、脳がパンクする。覚えられたとしても、忘れたり、思い出すのに時間がかかったりする。そうではなく、情報を整理すること。たとえば、目の前にある食べ物を手当たり次第に口へ持って行くのではなく、コース料理のように、前菜、お魚料理、お肉料理、デザートというふうに順序立てて、ストーリーのある形にしてインプットしていく。そのときにかかっているBGMや、照明の色、ワインの香り、窓の外の夜景や壁に掛かっている画、室温、会食の相手の表情や衣装などの周辺情報も併せて記憶する。思い出すときのためのヒントも一緒に覚えるイメージ。そうすれば、ウサギとカメの競争のように、君が最後は天才に勝つという逆転も起こり得ると思うよ。」

 最後の最後に、こういうアドバイスを付け加えました。「記憶術のお話は以上だが、他人から教わった記憶術よりも、自ら編み出した記憶術のほうが有効なので、このお話をヒントにして、自らのやり方をどんどん編み出してみよう。できれば、友達や先生とこの種の話題で意見交換する機会をときどき持つようにすると、君オリジナルの記憶術ができあがるし、勉強や記憶すること自体が今よりもグッと楽しくなると思うよ。」