Ⅰ はじめに感動ありきB 棋譜並べ(7)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅰ はじめに感動ありきB 棋譜並べ(7)

 級位者へのアドバイスとしては、よい棋譜を厳選するということ。

 もちろん、そんなに肩肘はらずに、手近にあるプロの棋譜を並べるということでもよいです。棋譜並べの敷居を高くしないという意味では、こちらのほうがよいのかもしれません。最初は全部並ばなくてもよいので、気軽に取り組んでもらえたらと思います。

 しかし、その段階を越したというなら、お手本になる棋譜を選べたほうがよいと思います。

 なぜなら、あまり難し過ぎる棋譜だと理解が追いつかないですし、実戦で応用するのも困難だからです。

 ところが、アマチュアの級位者の参考になる棋譜となると、なかなか難しい。プロの場合、水面下の読みがスゴすぎて、手の打ち消し合いという側面が強いから。

 そこで、おすすめなのが、次の棋譜です。

 

・二枚落ち定跡

・対抗形か先後同型の棋譜で、100手前後のもの

 

 上記はあくまでも1つの基準でしかないわけですが、二枚落ち定跡は体系化されていて、本当によくできたものだと思うので、一並の価値あり。私などは1万回並べても飽きません。

 手数に関しては、有段者なら、あえて長手数のものを並べることも粘り強さにつながってくるのでおすすめなのでしょうけれど、級位者だと疲れてしまうと思うので、100手前後のものがよいでしょう。

 実戦にもよく出てきて、定跡に親しめるという意味では、参考書も多い対抗形(居飛車振り飛車の戦い)がおすすめ。

 相居飛車は難しい戦法も多いのですが、矢倉や角換わりなど、先後同型の戦いを勉強すると、中盤力が鍛えられます。

 プロ棋士棋譜が合わないと思う方には、女流棋士棋譜もおすすめ。近年はレベルが上がってきている印象ですが、振り飛車多めですし、攻めが鋭く、技もかかりやすいので、アマチュアの参考にもしやすいからです。私自身は、里見香奈先生の棋譜をよく並べています。

 どんな棋譜を並べてよいのか迷っている方は、佐藤慎一先生の編んだ棋譜集も推奨します。一手ずつ解説してあるので、級位者の棋譜並べ党には最適と言えます。3種類ありますが、なんとなくお好きなものを選べばよいと思います。

 ただし、級位者に関しては、棋譜並べよりは、入門書や定跡書、次の一手詰将棋などで基礎をきちんと勉強することが大切です。

 とはいえ、棋譜並べを排除する必要はありません。級位者に棋譜並べは不要という方もいらっしゃいますが、私はそうは思いません。棋譜並べは、全体の流れを把握する訓練として最良ですし、筋をよくする効果も期待できます。プロの思考の痕跡を辿ることができる唯一の勉強法でもあり、憧れの棋士の思考を追体験できるというメリットも見逃せません。

 そして、現実的には、符号に親しむという効果が大きいです。▲7六歩などの符号は、級位者にとってきわめて厄介なものの1つ、障壁だと思いますが、棋譜並べをすることで、この符号に対する恐怖心をやわらげることができれば、もうけものだと思うのです。

 音楽をする上で楽譜を読めるかどうかが大きな岐路になるのと同様、将棋をする上では棋譜を読めるかどうかが大きな岐路となるのです。

 私も級位者のころは、棋譜並べをしていましたよ。

 谷川浩司先生と米長邦雄先生の相矢倉の将棋を並べていたことをうっすら覚えています。棋譜の中身については後年、並べ直したことによって覚えているに過ぎないのですが、はっきり覚えているのは、その成果。

 棋譜並べをすることによって、棋力がグンと上がったのでした。それまで勝てなかったライバルに少しずつ勝てるようになっていった。その契機が、棋譜並べだったということは、はっきり記憶しています。

 棋譜並べは、級位者にもおすすめの勉強法です。