Ⅳ 形勢判断を見直そう(4)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅳ 形勢判断を見直そう(4)

 将棋の理想形は、初形です。完全に同点、互角ですから。

 ここからどのくらい理想を崩して、勝つことができるかというのが将棋というゲームに対する私なりの定義です。

 相手玉に詰みがあれば、駒損は関係ありません。これも将棋というゲームの面白さと関係していますが、そうなってくると、詰将棋の鍛錬が最も重要な上達法ということになってしまいます。

 もちろん、そのような意味では、詰将棋が最高の上達法であることは間違いないので、否定することはしません。よって、私たちは、詰将棋を解くべきです。

 しかし、初形から即詰みに討ち取ることができないという、もう1つの真理を見なければ、二者択一を選ぶ愚を犯すことになります。

 詰みがないときは、詰めろをかけることが必要であり、詰めろをかけることができないときは、詰めろをかけることができるようにすることが必要です。

 さらに困ったことに、それだけが唯一の方法ではありません。詰みはなくとも、勝ったり負けたりする要素があるからです。全駒されたら、負けです。入玉されても、負けです。ゼットを作られても負けです。このようなことも考慮に入れる必要があります。

 そうだとすると、やはり玉の堅さや広さも、重要な指標となります。これははっきりしています。詰将棋だけでなく、必至や受けの力も求められます。

 さあ、今回は、ここで立ち止まって考えてみましょう。頭が痛くなるまで考えてください。詰将棋にも、寝技にも対応できる大局観とは、どのようなものか、と。

 形勢判断の3要素のうち、手番は明らかに詰将棋向きです。スピード勝負で先に詰ませたものが勝ちという思想だから。もちろん、手番があれば、受けることもできるので、終盤においては、手番があって困ることはありません。終盤は駒の損得より速度、です。

 しかし、中盤においては、手渡しが重要なことも多い。難しくてわからないときに暴発して自滅するという方は案外、多いものです。じっと囲いを補強したり、じっと相手の大駒を抑え込んだりというような受けの手、あるいは、じっと駒を補充する駒得を図る手、はたまた、次に攻めるための準備をするという攻めの手を覚えれば、もう立派に有段者でしょう。中盤では、駒の損得&駒の効率が大事なわけです。

 ここまでが通常の形勢判断の概説ということになるのですが、私の見方はこれに加えて、次のような形勢判断も加味します。

 初形からの崩れ度合い。

 初形の駒(先発メンバー)と現状の駒(交代メンバー)を見比べ、初形の効率と現状の効率をパラレルに対照し、それによって手番で何を優先するかを決めるということをしています。

 さらに、初形からどんどん離れていく戦略を採るのか、それとも初形という理想に戻す戦略を採るのかを考えます。

 たとえば、玉の囲いを例にすると、初形は二枚の金で守られています。現状の玉が裸玉だとすれば、2ー2=0ということになります。相手の玉が三枚の穴熊や美濃囲いだとしたら、2+1=3ということになり、3枚差です。

 こういうときは、0に1を足して、2枚差にする。もしくは、0のままで、広さや寄せで差をつけるのかということを考えるわけです。

 自前の大局観は、こういうときに即座に役に立つ大局観でなければ相棒として信頼することはできません。