Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(1)
Pピリ将
「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)
Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(1)
「二者択一は選ぶな」の1つの実例として、「持ち時間論」を展開してみようと思います。
なぜ、「持ち時間論」を展開するかというと、以前に述べた「高速棋譜並べ」とも密接に関連するからです。
プロ棋士の持ち時間を見てみると、上は各9時間、下はフィシャールールまで、実に多種多様です。「南禅寺の戦い」など歴史的な対戦にまで遡ると、持ち時間の幅というものには本当に呆れるばかり。
それに比べれば、われらアマチュアの持ち時間は、シンプルです。大会などでは、数十分の持ち時間に、30秒の秒読みがあるかないか。ネット将棋だと、15分30秒から、2分切れ負けまで。
明らかにプロより短いという特徴があり、長い持ち時間の将棋は皆無です。これは女流プロや、プロの卵である奨励会員にも当てはまることで、プロとアマの最大の違いは、持ち時間である、と言い切ってもよいように思います。
つまり、アマチュアの強豪とは何かと問われれば、短い持ち時間に強い人が強い人なのだ、という定義がはっきりと下せるというわけです。ここまではロジカルにものを考えることのできる人なら、容易に導き出せる定義です。
そうであるなら、私たちがすべきことは地力、実力を養成すると同時に(「と同時に」の4字には傍点を付けたい)、持ち時間への対応を訓練することだと結論づけることができそうです。
ところが困ったことに、このことを忘れているアマチュアが多いのです。時間を言い訳にしている方がゴマンといる。これは自らの時間管理能力の欠如を広報しているようで、まことに見苦しい。「二者択一は選ぶな。」時間の管理も含めて、実力です。
かくいう私自身も、かつては持ち時間の管理がとても苦手でした。もともとが長考派だったので、何時間も考えることは苦にならないのですが、時間切迫で負けることがしばしばでした。
最初の小学校では無敵だったのに、転校先では負けてばかり。なぜかというと、相手の対局態度が悪くて、「早く指せ」と焦らせてくるのです。今のように対局時計(持ち時間)など全くといってよいほどなかった時代ですから、落ち着いて、自分のペースで戦えず、自滅していたのですね。
しかし、今では持ち時間で苦しむことがなくなりました。長時間の対局でも、持ち時間の短い勝負でも、結果が左右されるほど影響することはなくなりました。
そういえば、プロの動画を見ていたのですが、終盤の時間が切迫した局面での早指しぶり、いわゆる叩き合いの場面が、本当にすごいですね。頭の回転が違うと唸らされます。
というわけで、
「長い持ち時間か、短い持ち時間か。」
「盤上没我か、持ち時間などの盤外を意識するか。」
これらの二者択一は、本当にくだらないとわかります。
盤上でも勝ち、時間でも勝つ。これが真の実力者というもの。
かつての自分自身のように、こんな選択に無駄な時間を削られているぐらいなら、とっとと持ち時間の対策と戦略を練ったほうがよいですよと、アドバイスしてさしあげたいですね。