Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(7)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(7)

 実戦のスリルは、やはり満点! 人間との勝負は、やはり最高!

 しかし、満点しかやらないのか? 最高しか乗らないのか?

 ここらへんが思案のしどころという気がするけど、どうだろう?

 

 実戦ならではの代わりのない喜怒哀楽は、たしかにあります。しかし、すべてを肩代わりできるものは存在しないけれども、その一部をシミュレートできるものなら、あります。棋譜並べが、それ。しっかり感情移入すれば、実戦に近い感覚を味わうことができます。観戦にも、これが当てはまります。

 けれども、こういう見方もあると思うのですよ。それは、

  実戦にはない人工的な将棋の良さ。

 なるほど、泥くさい実戦は、すばらしい! しかし、人工的なものに惹かれるという感性も人間には備わっているはずで、これを鈍磨させてしまうのが実戦一辺倒の人だと思います。

 人工的なものといえば、コンピュータ将棋があげられます。極致。

 ただし、私がおすすめしたいのは、ソフトではなく、定跡。特に終盤まで手順の書いてある定跡書や実戦例の紹介してある定跡書をおすすめします。

 アマチュアのお手本となる棋譜は、序盤・中盤・終盤が淀みなく流れるように進んでいき、収束するもの。こういう棋譜を並べて、きれいに勝つ感覚を身につけることは、ノイズの多い実戦では難しい。プロの棋譜でも一長一短あって、泥仕合のようなものからも得るものはありますが、まずはきれいな棋譜を見つけるところから始めましょう。

 駒落ち、特に二枚落ち定跡などもおすすめで、こういうものを高速棋譜並べで身につけるのです。

 実戦では、人工的な定跡どおりに進むことはなかなかありません。しかし、理想というものがどういうものなのかを知らずして、理想に近づくことはできない。だから、自分なりに、お手本というか、教科書というかはともかく、ある種の模範を持っていてほしいと思います。

 ソフト対局であれば、レベルを下げたり、駒を落としてもらったりして、ある程度の接待モードで対局し、その代わり、完璧に勝つ感覚を会得したいところ。

 こういうソフトとの対局は、スランプの克服にも有益です。

 実戦以外のシミュレーションでは、勝利のイメージトレーニングを積むことが肝要だと主張してみたいです。

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(6)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(6)

 「実戦を指さなきゃ、生きている意味がない」と難癖つけていた御仁も、そろそろ実戦断ちは、板についてきましたでしょうか。

 頑固な人は、伸びません。素直な人は、伸びます。これは間違いありません。

 もちろん、誰彼かまわず素直だと、欺される恐れもあるのでご用心ですが、この人についていこうと決めたなら、たとえ火の中水の中、飛び込んでいく覚悟を持ちましょう。本当に強くなりたいのなら、信じてついてきたまえ!

 「実戦を指さなきゃ」と難癖をつけている御仁は、実はヤバい人。まず、そのことに気づいたほうがいい。どうしてかというと、将棋はもともと戦争ゲーム。

 だから、これは史実かどうかわからないのだけれども、まことしやかに回想しているところによると、敗戦後にGHQが将棋を取り締まろうとしたとき、升田幸三先生が「捕虜を生かす思想」とかなんとか言って難を逃れたと伝えられるわけです。

 つまり、「実戦を指さなきゃ」というタイプは、極論すると、シミュレーションに満足できないタイプ、ということを意味してしまいます。やがて、将棋どころでは満足できず、戦争に突入するということにもなりかねません。

 そうでないとしても、相似形であることはたしかで、将棋は実戦ではなく、事前の研究などの準備によって強くなるという、このブログの思想とは相容れない。

 将棋3大上達法の1つにして、このブログがイチオシの高速棋譜並べの真価は、ここと関わってきます。棋譜並べは、理屈っぽくパラフレーズすると、「戦争」の代理表象であるところの「将棋の実戦」のさらにまたその代理表象ということになるわけですが、そこにどれだけ全力でコミットできるかどうかが問われるわけです。

 実戦さながらに感動できるかどうか。実戦か棋譜並べかという二者択一を超克できるかどうか。そのようなことが問われているわけです。

 詰将棋のように、棋譜を見ただけで、脳内でクリアに並べて鑑賞することができるよという人は、そもそもこのブログの読者としてふさわしくありません。しかし、大部分の読者は、そうではないはずで、そうであるなら、以下の記事も参考になることでしょう。詰将棋のように手数が短く、エリアも狭いものは、脳内将棋盤づくりの入門にはちょうどよいものの、さらに上達しようと意志する者は、棋譜並べに突入するしかないのではないでしょうか?

 ここでようやく盤駒を使用します。「パソコンで並べたほうが」という人は、ここまでの記事を遡って参照ねがいます。そもそもの文脈は、パソコンやスマホを遠ざけ、盤駒まで封印するという趣旨でしたので、ここでようやく盤駒の封印を解く。そういうふうにご理解いただきたいのです。

 盤駒を使用して、棋譜を並べる。高速棋譜並べについては以前に述べたので省略しますが、簡単にいうと、同じ棋譜を繰り返しすばやく並べていき、反対側の手番でも同じことを繰り返したら、符号を暗誦し、脳内将棋盤を活性化させるという、このブログのオリジナルの方法です。

 最初は補助的に盤駒を使う。その理由は、どうしても脳内と実際の盤駒では懸隔が生じるため、その懸隔をできるかぎり埋めようとしているから、と理解してください。 

 棋譜並べのよいところは、強い人に同化できるというところ。自分のセンスない将棋では永久に上達しない。だから、実戦を抑える。その代わりに、強い人の将棋をインストールし、それを指に、染み込ませ、脳に教え込むわけです。

 定跡書なども、黙読で読んでいたものを、高速棋譜並べと同じ要領で並べてみてもよいでしょう。

 ともあれ、全体の構図を再確認しておくと、

 戦争>戦争の代わり=将棋の実戦>将棋の実戦の代わり=棋譜並べ>棋譜並べの代わり=脳内将棋

ということになるでしょうか。この「代理」部分を鍛えつつ、必要に応じて、1つ上の審級を参照するというのが、これらの方法の根底にある考え方、哲学です。

 ただし、本物の戦争だけは回避したい。おっと、このブログの範囲を超えて、平和の思想まで見えてきましたね。

 「戦争」のところは、さしあたり「人間の器」という言葉でも代入しておいてください。かつての私はいざとなれば、喧嘩や競争も辞さずという、それなりにはヤクザな男でしたが、しかし、現在は喧嘩という手段をとることはほとんど無くなってしまいました。まさしく将棋の効用、といったところ。

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(5)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(5)

 「実戦を指さなきゃ、生きている意味がない」と難癖つけていた御仁も、そろそろ実戦断ちは、板についてきましたでしょうか。

 頑固な人は、伸びません。素直な人は、伸びます。これは間違いありません。

 もちろん、誰彼かまわず素直だと、欺される恐れもあるのでご用心ですが、この人についていこうと決めたなら、たとえ火の中水の中、飛び込んでいく覚悟を持ちましょう。本当に強くなりたいのなら、信じてついてきたまえ!

 実戦断ちの効用。それは、新鮮さを取り戻すということ。対局ばかりだと、新鮮さが薄れ、ひいては感動がなくなります。それでは、このブログの冒頭に述べた「はじめに感動ありき」の大原則に背くことになります。

 100日ぐらいかけて、詰将棋をじっくりやりこんだら、次はいよいよ9×9の登場です。ただし、まだ将棋盤は使わない。問題集をやりましょう。将棋の問題集は、詰将棋次の一手の2種類が有名。詰将棋の後は、次の一手です。

 次の一手は、段級位認定の問題を使い回しているものと、定跡などを追試するためのものの2つに分かれます。前者はひらめきの訓練、後者は知識の補強が目的です。

 私がここでおすすめするのは、前者です。藤井聡太先生の署名入りの免状がほしいのなら、次の一手で段級位認定を受けるというのが手です。『将棋世界』や『将棋講座』に載っているのをリアルタイムで解けば、認定が受けられるので、一度、見てみてください。

 認定はいらないという人は、過去のバックナンバーでもよいですし、書籍で購入してきてもよいと思います。しこしこ解きましょう。

 私のこだわりは攻防問題。受けと攻めを同時に鍛えることができるのと、盤面を広く見る癖をつけるのによくて、お気に入りです。もはや攻防問題がないと、私は生きていけない。実際、詰将棋よりも、攻防問題のほうが比重が大きいぐらいです。

 詰将棋が局地戦なら、攻防問題は総力戦。私は総力戦での能力を重視するので、それに合わせたトレーニング法を選択しているのです。

 まずは自玉の安全を確認する。次に相手玉の詰みを考える。相手玉に詰みがなく、自玉が詰めろであるならば、詰めろ逃れの詰めろを模索します。

 実戦中毒になるぐらいなら、詰めろ逃れの詰めろオタクになったほうが100倍、有益。断言しておきましょう。詰めろ逃れの詰めろを覚えると、強くなるだけでなく、将棋が面白くなること、間違いありません。

 級位者は王手飛車を、段位者は詰めろ逃れの詰めろを、常に虎視眈々と狙っていたいものです。逆に、喰らわぬよう、万全に、否、億全に警戒しておきたいものですね。

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(4)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(4)

 詰将棋棋譜並べ・実戦。

 言わずと知れた将棋の3大勉強法。

 ただし、今は実戦を凍結しようとしている。残された道は、詰将棋棋譜並べ。

 ところが、盤駒使用もできないとなると、棋譜並べはハードルが高い。

 というわけで、盤駒不使用期間においては、詰将棋が最適な勉強法ということになります。

 ここで大事なことは、実力に合った詰将棋を選びましょう、ということ。

 今、私たちが取り組もうとしている詰将棋は、通常の詰将棋よりも負荷の大きいものです。まず、パッと見る。覚える。で、脳内で解く。

 覚えて、脳内で解く詰将棋の場合、普段よりも易しい詰将棋が必要になります。3手しか解けない人は1手詰め、5手しか解けない人は3手詰めを選びましょう。

 同時に、広い盤面を使ったものは難しいから、最初は3×3や4×4ぐらいのものにしたほうが無難かも。

 同じ理由で、芸術的なものよりは、実戦的なもののほうがおすすめ。

 脳内将棋盤づくりにおいて、最重要なことは、持ち駒の出し入れをクリアにすること。その点も詰将棋は訓練として好適。歩の数などは、さすがに棋譜並べに譲らざるをえませんが、常に持ち駒、駒台をクリアに意識することを心がけてみてください。

 詰将棋は繰り返し解きましょう。反復することで脳内将棋盤の精度は向上します。油彩の重ね塗りのイメージ。

 同じ詰将棋を繰り返して、飽きが来たなと思ったら、先後を反転してみましょう。今度は、自玉の詰みを読む練習に早変わり。

 自玉の安全度を読み切るという能力は、敵玉を詰ますことと同じぐらい重要。ここで妥協してはいけません。徹底的に鍛えてしまいましょう。

 脳内将棋盤だけでなく、終盤力にも貢献するので、この勉強法はマストです。

 実戦指している暇があるなら、脳内で詰将棋を繰り返し、解きましょう。

 問題数をたくさん解くことも、実戦をたくさん指すか否かという問いと同じで、有効な場合もあれば、そうでない場合もあります。そうでないことも多いので、量より質を重視する戦略も、自身の状況に照らして、よく考えてみることをおすすめします。

 私の場合は、たくさん解くより、1問で遊び倒すことを優先していますよ。

 たとえば、ただ解くだけでなく、あえて詰まない順を並べてみるというようなことをよくやっています。解説よりも広く、深く読む。これも意味はあって、脳内将棋盤を鍛えるということに加え、あらゆる変化をしらみつぶしに読む訓練になるのです。

 オセロ(リバーシ)の終盤もそうですが、将棋では最後の最後は、すべての変化をしらみつぶしに読み切ることが原則、義務。読み抜けがあると、すべてが烏有に帰すから。

 というわけで、ただ解く人と、遊び心を持って解く人との間では、大きな差がつくと考えます。既存の詰将棋を脳内でアレンジするのも好きですが、目的は詰将棋作家になることでなく、あくまでも実戦で強くなることを目指していて、私の場合、幸い、創作の誘惑に負けてこの目標がぶれるというようなことはありません。

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(3)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(3)

 大人になって将棋を始めたという人や、長いブランクがあるという人は、実戦不足の可能性があります。そういう人は、オシム監督が「走れ」というように、「指せ」と言いたい。

 けれども、子どものころから指しまくっている人には、基本的に実戦不足ということはないと考えています。むしろ惰性で指している中毒、病気の気味すらあるのではないか。

 こういう人は、実戦を抑えて、別の方法を模索することをおすすめします。

 まず、実戦中毒の改善方法ですが、それは一言でいうと、離れることに尽きます。将棋盤とモニターから。将棋中毒の人は、ネット中毒でもあります。モニターを遠ざけましょう。

 あなたの目の前に、小学生か中学生の子どもがいると仮定しましょう。認知しようが、すまいが、あなたの子です。この子がパソコンやスマホばかりして、勉強しないとしましょう。どういう感情が起きますか?

 あるいは、あなたの目の前に、恋人でも部下でもよいので、いるとして、その人が絶えずスマホばかりいじっていて、あなたの話を聞いていないというシチュエーションでも構いません。

 これらの状況設定がフィットしないなら、あなたが自由に設定していただいても差し支えありませんが、ネット依存している人を客観的に、つまりは醒めた目で見ることが大事です。

 どうしてかというと、あなたの対戦相手は皆、そういう人ばかりだから。そして、あなた自身もそういう人だから。違いますか?

 こういうことになってくると、モニターから離れた人が勝ちです。将棋が強くなるためには、ネット将棋が不可欠だ。そのような思い込みはしばらくの間、捨ててください。また、動画を見ないと死んじゃう。そのような固定観念も凍結しましょう。別に死にはしません。

 ネット断ちをするには、前回お話したように、指しまくって、負けまくって、将棋を引退するという方法もないわけではありません。事実、私自身は、このルートでした。廃人にまで追い込まれて、ようやく足を洗う。しかし、これはおすすめできません。自戒を込めて書きますが、ここまでやらないと、やめられないというのでは頭が悪すぎます。

 ただし、禁止だけでは、ネット断ちをすることはできないでしょう。そこで、もう1つ、積極的に別の趣味を見つけることをおすすめします。ネットを使わないで済む趣味を探してみましょう。スポーツでも楽器でも庭いじりでも何でもよいので、将棋とは直接、関係のないものを見つけましょう。

 「急がば回れ」と言います。まずはこちらのほうから上達させていきます。そのことにより、上達のプロセスが具体的にわかり、成功体験とすることができます。その成功体験を将棋に応用するのです。迂遠な方法かもしれませんが、伸び悩んでいる人には、こちらのほうが早いです。

 将棋盤は離さなくてもよいのではないか?

 このように思った方は鋭い。たしかに、将棋盤自体はネット依存とは無関係ですね。しかし、本当に将棋が強くなりたかったら、将棋盤は離すべきです。なぜなら、将棋盤は脳内につくりあげる必要があるから。モニターや将棋盤を使っているうちは、まだひよっこ。脳内将棋盤で楽しめるようにすることが、最強レベルになるために不可避です。

 モニターからも将棋盤からも離れられる趣味を見つけよというのは、実は後に脳内将棋盤で楽しむためでもあるのです。

 現に、私は「ながら勉強」が大好きで、日々実戦ではなく実践しています。運動の合間に脳内詰将棋、音楽を聴きながら、庭をいじりながら、温泉につかりながらの脳内棋譜並べ、という具合に。

 この際ですから、棋書や棋譜も、盤駒を使わずに読む習慣を身につけましょう。

 この方法には限界もあるのですが、ある一時期、このような時期を持っておくことは後の上達にも役に立つので、このことが不十分な方には、おすすめの上達法です。

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(2)

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(2)

 答えは唯一なのですが、繊細に記述していきます。

 唯一の答えというのは、

 「実戦も必要だが、実戦以外も必要。」

という、まことに身も蓋もない結論なのですが、どちらにアクセントを置くかという問題は残るわけです。

 実戦不足の方は、前のほうにアクセントを置きましょう。実戦ばかりで強くなれないよという方は、その反対に後ろのほうにアクセントを置くべし。

 まず、実戦不足の方にアドバイス。結果は度外視して、とにかくバンバン指しまくりましょう。経験値を積むことが目的なのですから、連敗したって、そんなことは細かいことと開き直って、気にしちゃいけません。むしろ連敗記録を勲章にするぐらいの強いメンタルを身につけるぐらいの意気込みです。

 実際、たくさん負けて、それで強くなったら、あとで笑って振り返ることができますよ。武勇伝にしてしまう。

 何の苦労もせずに成功したという話ほどつまらないものはないので、失敗した経験を後に語るためと思って、負けまくりましょう。

 私自身も負けまくって強くなりました。かつて将棋倶楽部24で、負けて悔しいものだから指しまくっていたら、メンタル崩壊してしまい、むきになればなるほど勝てなくて、負けに負けたり、最後は気づいたらレーティングが0まで落ちてしまいました。

 「堕ちきれば後は上がるだけ」とはよく言いますが、実際にここまで指しまくり、負けまくった人も珍しいかと思います。

 もちろん、この後、どんどん勝って、元のレートを取り戻し、越え、初段になり、二段になり、三段になりと、授業料に見合った成果をあげることができたのですけれども、あそこで指しまくり、負けまくったことは、間違いなく糧になっています。

 経験値とメンタルの両面で、得るものがありました。

 覚えた手の方、初級の方は、当たり前ですが、簡単には勝てるようになりません。将棋で最も大変なのは、ここだと思います。しかし、だからといって、結果を気にしすぎて、対局すること自体が怖くなるのではいけません。

 最初からうまくいく人などいないのですから、負けることを恐れず、教わるという姿勢で頑張っていきましょう。結果よりもプロセス重視。昨日よりも今日、今日よりも明日。成長が認められれば、万事OKなのです。最初のうちは、自分との戦いだと考えてみてください。

 弱い人は、とにかく指しまくってください。わけがわからなくても結構。とにかく慣れること。9×9の将棋盤に慣れ親しむだけでも得るものはあるのですから、とにかく対局時間、対局の局数を積み重ねていくことをおすすめします。

 負けても楽しそうにしている教え子がいるのですが、素敵ですね。才能を感じます。将棋は勝って楽しく、負けて悔しいゲームではあるのですが、負けて悔しいだけなら、皆、負けてばかりいると辞めてしまうはずなのに、実際はそうなっていないから、単なる勝ち負けで割り切れるゲームでもないという予測が成り立ちます。

 誰かが言っていましたが、勝ち負けだけなら、じゃんけんすればいい、と。

 そうです。将棋はじゃんけんとは違った楽しさ、別の言い方でいうと、奥深さがあるのです。

 というわけで、対局不足が原因の方は、臆せず、バンバン指しまくりましょう! 負けても、もう一丁! と、その気概ですよ。

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(1)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(1)

 将棋に即した話では、これまで棋譜並べ論と持ち時間論の2つを展開してきました。

 今回からは「非実戦論」を展開します。

 キャッチフレーズは、「戦わずして、強くなる。」

 カッコイイ!!

 

 

 一般的にいって、実戦に対する考え方は、2つの相反する言説に囲繞されています。

 1つは、ぶつかり稽古派。振り飛車党のプロ棋士でいえば、鈴木大介先生のタイプ。

 もう1つは、研究派。振り飛車党のプロ棋士では、藤井猛先生のタイプでしょう。

 このことからもわかるように、結果だけを見ると、どちらの登山口から登っても最終的にはとてつもなく強くなれる、ということがわかります。 

 したがって、ここでも二者択一は無効で、実戦も必要だし、研究も必要ということだろうと冷静に当たりをつけておきましょう。

 その上で、どちらを主軸に据えるかという問題が出てくるわけですが、ここでも判断は二又に分かれます。実戦経験が必要な人もいるでしょうし、そうでない人もいるでしょう。

 そこで、私が投げかけたい問いは、こういう問いです。

 「今までたくさん指してきましたか?」

 「指して、指して、指しまくってきました! ひょっとして指し過ぎかも」

 こういう答えの人は、これから書いていくような内容を踏まえて、「一度、実戦を抑えてみませんか?」

 その反対に、実戦不足、経験不足で強くなれない人もいるのですが、そういう人は、結果は度外視し、「一度、指しまくってみては、いかがですか?」

 それぞれに対し、当然ながら答えは変わりますが、以下の記事は両者いずれにも対応できるように書いていくつもり。ただし、今回は前者のほうに主軸を置いて書きますので、後者のタイプはその点を織り込み済みでお読みいただければ幸いです。

 

 

 最初に断言しておきますが、どちらのタイプであるにせよ、実戦だけでは絶対に強くなれません。「実戦だけでは絶対に強くなれない」というこの一事こそが、以下の一連の記事の、いわば前提となります。

 そうであってみれば、「どうすれば実戦での吸収力を向上させることができるか?」という問いと、「実戦以外での棋力向上の方法は何か?」という問いが同時に出てくるはずなのですが、困ったことに、これら両方を同時に問い、これら両方に同時に答えた人がこれまでに全くいないというところに、従来の上達法の大きな問題がありました。

 この問題に立ち向かうだけのためにも、一度、盤を離れて沈思黙考する必要がありそうです。そして、私が棋譜並べを重視する理由も、この交差点と密接に関わってきます。