Ⅲ 盤外こそわが戦場B 実戦以外(1)
Pピリ将FINAL
「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)
Ⅲ 盤外こそわが戦場B 非実戦(1)
将棋に即した話では、これまで棋譜並べ論と持ち時間論の2つを展開してきました。
今回からは「非実戦論」を展開します。
キャッチフレーズは、「戦わずして、強くなる。」
カッコイイ!!
一般的にいって、実戦に対する考え方は、2つの相反する言説に囲繞されています。
1つは、ぶつかり稽古派。振り飛車党のプロ棋士でいえば、鈴木大介先生のタイプ。
もう1つは、研究派。振り飛車党のプロ棋士では、藤井猛先生のタイプでしょう。
このことからもわかるように、結果だけを見ると、どちらの登山口から登っても最終的にはとてつもなく強くなれる、ということがわかります。
したがって、ここでも二者択一は無効で、実戦も必要だし、研究も必要ということだろうと冷静に当たりをつけておきましょう。
その上で、どちらを主軸に据えるかという問題が出てくるわけですが、ここでも判断は二又に分かれます。実戦経験が必要な人もいるでしょうし、そうでない人もいるでしょう。
そこで、私が投げかけたい問いは、こういう問いです。
「今までたくさん指してきましたか?」
「指して、指して、指しまくってきました! ひょっとして指し過ぎかも」
こういう答えの人は、これから書いていくような内容を踏まえて、「一度、実戦を抑えてみませんか?」
その反対に、実戦不足、経験不足で強くなれない人もいるのですが、そういう人は、結果は度外視し、「一度、指しまくってみては、いかがですか?」
それぞれに対し、当然ながら答えは変わりますが、以下の記事は両者いずれにも対応できるように書いていくつもり。ただし、今回は前者のほうに主軸を置いて書きますので、後者のタイプはその点を織り込み済みでお読みいただければ幸いです。
最初に断言しておきますが、どちらのタイプであるにせよ、実戦だけでは絶対に強くなれません。「実戦だけでは絶対に強くなれない」というこの一事こそが、以下の一連の記事の、いわば前提となります。
そうであってみれば、「どうすれば実戦での吸収力を向上させることができるか?」という問いと、「実戦以外での棋力向上の方法は何か?」という問いが同時に出てくるはずなのですが、困ったことに、これら両方を同時に問い、これら両方に同時に答えた人がこれまでに全くいないというところに、従来の上達法の大きな問題がありました。
この問題に立ち向かうだけのためにも、一度、盤を離れて沈思黙考する必要がありそうです。そして、私が棋譜並べを重視する理由も、この交差点と密接に関わってきます。