Ⅰ はじめに感動ありきB 棋譜並べ(2)

Pピリ将FINAL

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

 

Ⅰ はじめに感動ありきB 棋譜並べ(2)

 

 最近はまず序盤だけを数回、並べるようにしています。

 序盤の研究としても有効ですが、土台づくり。しっかりとした石垣(土台)の上にお城を建立していくイメージです。

 たとえば、第34期竜王戦第1局:藤井聡太挑戦者対豊島将之竜王戦であれば、

 ▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲3八銀△7二銀▲9六歩△5二玉▲6八玉△1四歩▲7六歩△8六歩▲同歩△同飛▲3六歩△7四歩▲2四歩△同歩▲同飛△7三桂▲7四飛△6二金▲8七歩△8一飛▲2四飛△2三歩▲2五飛△8六歩▲同歩△同飛

 ぐらいまで、でしょうか。

 ちなみに、ここまで一切何も参照せず、暗譜で符号を記しています。言葉を打ち込むより、スピードは速いです。

 ちなみに、▲9六歩~▲6八玉は藤井挑戦者の得意形で、豊島竜王の△7三桂が新手でした。

 このように序盤を繰り返し並べ、その後、序盤が確実なものに固まってきた時点で、全体も繰り返し並べていきます。その結果、このように暗譜できるようになっていきますし、脳内でも鮮やかに並ぶようになっていきます。

 ですから、公園のベンチに座って、あるいは銭湯の湯船に浸かって、盤駒はおろかスマホなしでも、カンタンに将棋ができます。

 プロならば造作のないことでしょうが、アマチュアの級位者や初段、二段クラスではなかなかできない芸当ではないでしょうか。ところが、それができるのが神速棋譜並べの効用。憧れのプロ棋士の領域に一歩だけ近づいた気分が味わえるというだけでも「感動」があります。

 序盤では、解説を読みながら、自らの読みも入れつつ、研究を兼ねています。ただし、序盤を抜け出ると、もうスピード重視で、細かい枝葉などは潔く無視して、最後まで一気に並べきってしまいます。

 最後まで並べきったら、また最初から。これを繰り返しているうちに、不思議なことに、「読書百遍意自ずから通ず」状態になっています。

 読みは入れていないつもりでも、自らの頭、目、指は、完全にお休みして何も感じていないというわけでもないようで、己の棋力の範囲内に限定されてはいるものの、その未知なる軌跡を自分なりに意味づけているわけです。

 とはいうものの、ヘボの実戦とは違って、曲がりなりにもプロ棋士の名局をなぞっているわけですから、自らの狂った感覚、壊れたセンスの矯正にもなります。

 書道のお手本をなぞる感覚に似ています。なぞり書きだけで上達するものでもありませんが、なぞり書きが有力な方法であることは否定できません。

 ともあれ、単なる早指しの実戦では、皮肉なことに、センスの悪い自らの指し手を強化してしまうことにつながりかねず、かえって逆効果になっていることもあると思います。字の下手くそな人が、永遠に悪筆であるのと似ています。

 弱い人、特に大人の弱い人の場合は、いくら対局を重ねてみたところで、現状維持と自己満足がせいぜいのところで、決して上達にはつながりません。

 そうはいっても、感覚というものが、速さの中でしか鍛えることができないというのはやはり真理。野球のバットの素振りをスローモーションで練習しても、あまり意味がないのと同じ原理です。ただし、将棋ウォーズや将棋クエストなどの超早指しで指しても無意味だからこそ、神速棋譜並べの出番なのです。

 この文脈において、神速棋譜並べは、最強の学習法、最良の上達法の1つ(誰も「唯一の」とは言っていない)だと私は確信しています。

 この方法で特訓を積んだ上での超早指しならば、きわめて有益であると断言しておきましょう。

 神速棋譜並べの効用、それは第1に脳内盤づくりに役に立つということであり、第2に感覚を磨くということであり、第3に早指しに強くなれるということです。