Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(10)

Pピリ将

 

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「3姉妹ピリ駒ちゃん」(制作:びわのたねさん)

 

 

Ⅱ 二者択一は選ぶなB 持ち時間(10)

 「早指し」と「しっかり考えて指すこと」では、どちらが上か?

 二者択一は選ばないので、上下はありません。

 たしかに、「しっかりと考えて指すこと」のほうが上のように見えはします。しかし、プロになるような子どもは早見えだと、言われています。プロになれないアマでも、早見えでなければ、大会で活躍することはおぼつかないです。

 もちろん、だからといって、「しっかりと考えて指すこと」が大事でないかというと、そうではありません。プロになった後、タイトル戦で活躍するトップ棋士は、長時間の思考を財産として一時代を築いていくわけです。また、アマチュアも反射神経だけで指していては、大きな大会では通用しません。

 結局、両方が大事なのであって、片方だけでやっていけるほど甘い世界ではないという当たり前すぎる結論に到達するだけですね。ただ、この当たり前すぎる結論がわからなくなるのが、今日のおかしなところ。

 私の場合、子どもの頃から遅指し派だったのですが、ここ十年で早指し派に転身しました。ネット将棋の影響です。最初の頃はまったく歯が立たず、頭に血が上って指すと余計に勝てなくなるという負のループに。

 そこで立ち止まり、踏みとどまりました。せっかくだから、超・早指しも会得して、プラスに作用させてやろう。

 このように、しっかり方針を立てたのが、奏功したようです。

 そもそもが「手が荒れる」という言説に抗ってやろうという動機もあるものだから、「手が荒れ」そうになると、しっかりケア。そんな感じで来たから、結果的に振り返ってみると、良かった点しか見つからない。

 たとえば、直線的な順を避けるようになったのは、大きな成長でした。反射的に指すと、取りだと逃げるし、取れるなら取るというように、単純な手を選びがちだったのですが、曲線的な手順で相手を翻弄することを覚えてからは、時間があるときでも、そういう手を選べるようになってきました。

 受けの力が強くなったのも、効能でしたね。分からないときは、とりあえず自陣を埋める、固める、守る。もしくは、駒をじっと補充しておく、悪手を指さずに待つ、といった習慣が身についたので、時間があるときでも、粘り強くなりました。

 むしろ早指しのおかげで暴発しなくなったといっても、決して過言ではありません。これはたいそう重要な岐路でして、何百局、何千局指しても、暴発しまくるタイプは、伸びません。局数を重ねるにつれて、ミスやポカ、トン死が減り、自重したり、相手のミスを待てるようになったりできるタイプが伸びるタイプです。

 もちろん、攻めに磨きがかかった面もなきにしもあらず。時間がないから、守るだけでは勝てないこともあるので、さっさと大将を討ち取るというような将棋も増えたように思います。

 早指しが悪いわけではなく、早指しをトレーニングとして位置づけられないところが悪いのだと思います。「早指しだから負けた」というような負け惜しみを言っているようでは、いけません。

 早指しを指すことで、思考も姿勢もやわらかくなるように持っていきましょう。